ビジネスにおける共感の重要性
現代のビジネス環境では、単に優れた商品やサービスを提供するだけでなく、ブランドがどのように共感を生み出し、それを強化していくかが、企業の成長に大きな影響を与えると考えています。今回は、共感がビジネスにおいて重要な理由と、それを実現するための「ブランディング」と呼ばれる概念について掘り下げていきます。
消費者のニーズ動向
現代では、ブランディングの重要性は急速に増加しています。それは時代の流れを見ると明確になります。1980年代では、とにかく物が不足しており、価格の安さや機能的価値などが重要視されていました。しかし、2000年頃からは技術や生産力の向上により、品質の良い物が手頃な価格で入手可能になることで、消費者の関心は単なる「スペック重視」から、見た目の美しさや他者と差別化された商品を求めるなどの「デザイン重視」に移行していきました。

2020年以降の現代では、SNSやデジタルメディア、AIの発達が貢献し、消費者が以前より多くの情報にアクセス可能になったと同時に、競争が激化し、取捨選択される時代になりました。その中で、消費者の興味は、表面的なサービスの価値ではなく、コンセプトや存在意義といった、数値化できない意味、体験、共感などに基づく情緒的な価値を重視する時代に移り変わっています。
この約40年間の動向を見ると、消費者の関心が商品やサービスの機能性から徐々に人間の内側にある感情的な部分に焦点を移し、ブランディングの役割が拡大していることがわかります。そのため、企業側も各ステークホルダーに対する思想や価値観を軸としたコミュニケーションを設計することは無視できない観点と言えます。
ブランドコア
ブランドの目的を考える時には、お金を稼ぐこと以上に「この会社は何のために存在しているのか」「誰のために働くのか」そのような軸が通っていなければ組織が有機的に動くことも、消費者の購入意欲を高めることも難しいでしょう。
ブランドには、絶対に譲れない思想や価値観などから構成されるブランドの核が必ず存在します。弊社はそれを「ブランドコア」と呼んでいます。ブランドコアは、ブランド戦略の最も上位に位置する概念で、これにより、ブランドの基盤となる要素を明確にし、一貫性のあるブランドメッセージを発信することができます。

ブランドコアを定義する際の代表的なフレームワークを紹介します。これらは、ブランドの意思決定において絶対的な基準になり、ブランドが存在する限り、原則として変わることはありません。経営者あるいは組織で共通する「Why」を中心に、言語化します。
Purpose(目的)
企業・ブランドがなぜ存在するのか。社会にとっての存在価値
Mission(使命)
ブランドの目的を実現するために、何を成すべきか。
Vision(将来像)
ブランドが事業を続けていくことで実現を目指す社会像
Value(価値観)
ブランドにとって大切にする価値観、行動基準
ブランドアイデンティティ
ブランドアイデンティティとは、前述のブランドコアから派生したより体系的に「ブランドらしさ」を言語化したもので、ブランディングを経営戦略に活用する際に便利な考え方です。
ブランドアイデンティティを明確化することで、社員が企業やブランドの魅力を言葉として把握できるようになり、顧客に対してブランドの魅力を正しく伝えることが可能です。

縦軸は、企業側の意思で創り上げるもの、もう一方は顧客側が主観的に持つイメージを置きます。横軸は、ブランドの外部に発信したり伝達する外的要素、もう一方は社内で浸透させるマインドや姿勢などの内的要素となるように各要素を配置します。
Physique(物理的特徴)
ロゴや書体、配色、商品・梱包デザインなど、ブランドの視覚的・物理的な特徴です。ブランドの価値やメッセージを、具体的なデザイン要素を通じてどのように表現するかを考えます。
Personality(パーソナリティ)
ブランドのボイストーンやコミュニケーションのスタイルを含めたブランドの人格や個性を表す要素を書き出します。顧客にどのように映るべきかの指針を明確にします。
Culture(カルチャー)
企業の歴史や伝統、価値観、社風など、ブランドコアから派生する文化的背景を書き出します。受け継がれてきた考え方や仕組みが「自分たちらしさ」を形成します。
Relationship(顧客との関係性)
顧客とブランドがどのような関係性を築いているのかを書き出します。共通する目的、または価値観にどのように共感しているのかを考えます。
Reflection(代表的な顧客像)
ブランドの顧客のなかで、最も多くを占める人たちの特徴を書き出します。性別・年代などの表面的な情報だけではない心理的な特徴やライフスタイルまでを考えます。
Self-image(セルフイメージ)
顧客がブランドと接したとき、企業についてどのようなイメージを持つか、ブランドにどのようなことを期待してるかを書き出します。
ブランドは言葉から生まれる
今回は、言語化した価値観を軸にコミュニケーションを設計することが重要だというお話をしました。言葉とその意味を作ることがブランディングの本質であり、その力を最大限に活かすことで、企業の価値を伝え、ブランドの持続可能な共感を生み出せると考えています。
弊社は、クライアントのブランドアイデンティティを最適化することを目的にデザインを行います。限られた予算で最大限にブランド価値を高めたい企業様はぜひお気軽にご相談ください。
オンラインにて1時間程度、課題や状況をお聞きし、弊社がご提供できることと所要期間、費用の目安などをご説明します。